お腹を引き上げるってどういうこと?引き上げるコツをつかむ

先日、バレエを習っていて体幹強化のためのレッスンに参加している学生さんから質問がありました。

「お腹を引き上げるってどういうことですか?」

たしかに。

わたしが学生時代にやっていた新体操でも何度も耳にしました「お腹を引き上げる」。「ジャンプのときに引き上がってない!!」と先輩によく注意されました。。

ひとによっては「重心を引き上げる」という言い方をしたりもしますね。

この「引き上げる」ってめちゃくちゃあいまいで、具体的に「どこの、なにを、どうしたら、いいの!!!」という気持ちになります。

ということで、「お腹を引き上げる」を感覚的な表現を避けてなるべく具体的に、物理学的な視点からわたしなりに解説してみたいと思います。

1.そもそもなぜ、「引き上げ」が必要なのか?

そもそも、なんで「引き上げろ」っていうのでしょうか?

分かるようで、結構あいまいだったりしませんか?

引き上げが必要な理由は「重心と安定性」が関係していると私は考えています。

物理学でいうところの安定の条件は「支持面積が大きい・重心が低い・質量が重い」の3つです。

お相撲さんの取り組み姿勢をパっと思い浮かべてもらえるとイメージしやすいかも。腰を落として足を大きく開いてどっしりとした構えで始まります。関取は体重も重いですから安定の条件バッチリですね。

では、安定の条件の反対、つまり「支持面積が小さい・重心が高い・質量が軽い」は不安定になります。

この不安定さは、バレエや新体操、ダンスでは「軽やかさ」につながる体勢です。

例えば下の写真では、左の方のほうが横から押されても倒れなさそうですよね。これが安定。

おそらく、「お腹を引き上げろ」「重心を上げろ」と言われる理由は、演技での軽やかさや浮遊感を表現するためではないかと思われます。

2.重心の位置はどこ?

では、重心の位置ってどこなんでしょうか?それをそもそも知らないと「引き上げ」ようがないですね。

この重心の位置に関しては、以前、下記の記事に詳細を書きましたのでぜひ読んでみてください。

よく「丹田」のあたり、おへそのちょっと下、という表現が使われますが、静止した状態であれば成人男性は身長✕55.5%、成人女性は54.8%くらいだそうです。

これが両手を上げたり、片脚を上げたりすると少し上にズレます。詳細は上記記事に書いてありますのでご参考に。

3.お腹を引き上げるコツ

では、やっと本題です。前置き長くてすみません。

肝心の「お腹を引き上げる」ってどうやればいいのでしょうか?

これを文字に表すのはむずかしい!

文字でなくても、先日、質問してきた学生さんに口頭で説明したり、実践したりしてもやっぱりむずかしい!!

いくつかパターンがあると思っています。

まず、腹筋をはじめ、そのほかの筋肉をある程度意識して動かせるかどうか。動かせなくても、その筋肉に意識をもっていける場合は次の2つを意識してみてください。

①動いているときのおおよその重心の位置を意識して、その部分の筋肉がゆるまないように意識する

さきほど「静止状態であれば重心の位置がある程度わかる」と書きましたが、演技や競技の最中は動いている状態なので重心の位置は常に変わります。

なので、まずは静止状態の重心の位置を「重心の位置ってどこ?スポーツと重心」記事でご確認いただき、動いているときはどのあたりだろうか?ということの見当をつけてみてください。

基本的にはつま先立ちになったり、ジャンプをしているときには直立状態の重心の位置より上がります

そして、その重心があるであろう位置の筋肉がゆるまないようにする。つまり、力を入れる。

これは、「引き上げる」というよりは「引き下がらない」ようにする、という感じです。

筋肉がゆるんだ状態、あるいはそもそも筋肉がいろいろな動きを支えるのに足りていない状態の場合には、重力によって下に引っ張られている状態です。

でも、筋肉にしっかり力が入れば重力に逆らってしっかり支えられる、引き下がるのは防げると思います。

②手脚を動かすときは体幹に近い場所から動かすように意識する

これもまた非常にイメージしづらい説明ですみません。

「ダンスで体を大きく見せるコツ」という記事の中段くらいで少し書いていますが、

たとえば、腕を伸ばすなら腕を意識するのではなく肩甲骨から伸ばす、脚を前に上げるなら股関節ではなくお尻から上げるように伸ばす、首を後ろに倒すなら首の付け根ではなくデコルテ部分から倒す、といった感じで

体幹筋に近い場所から伸ばしたり動かしたりすると、重心を引き上げやすくなると思います。

③筋肉に力を入れる感覚がわからない場合

①と②はある程度、筋肉が動かせる、または意識できる場合にできることだと思います。

では、そもそも筋肉が動かせない場合、とくに腹筋の感覚がまだつかめていない場合はどうするか。

わたしは対策としては次の2つかなと考えております。

  • 1)正しい姿勢で立つ。そしてお腹を引っ込める練習をする。
  • 2)腹筋をはじめ、背筋や腸腰筋などの体幹筋を鍛える

2)はありきたりというか、ま、それはそうだよね、という感じですみませんが、1)もわりと重要かなと思います。

まっすぐ立つときに①首が前に出ていないか、②腰は反っていないか、③肩に力が入っていないか。まずはこの3点を意識して立ってみましょう。

そうすると、だんだん足の裏だけでなくいろいろな筋肉を意識できるようになります。

そして徐々にお腹に力を入れる感覚も分かるようになってくると思います。

いかがでしたか?少しはイメージをつかめるといいのですが・・。

あと、先生から「引き上げろ」と言われると、ものすごい5cmも10cmも上がるのか??

とイメージしてしまうかもしれませんが、おそらく重心を引き上げられる高さというのは、引き上げていない場合と比べて数ミリとか数センチとか、ほんのわずかではないかなと、わたしは感じています。

でも、その数ミリや数センチできっと、演技が大きく変わるのだと思う。

なので、どうにも感覚的でむずかしい「お腹の引き上げ」ですが、ぜひ、この記事を参考にトレーニングしてみてください。

(2023年1月30日追記)

ゆっくりした動きのときにはお腹以外にも背部も意識した「身体の引き上げ」の感覚が必要と思います。下記の記事もぜひご参考ください。

4.お腹の引き上げを体験できるトレーニング(60分/6,200円)のご案内

当スタジオでは、エアリアルティシューという布やポールダンスのポールを使うことで「お腹を引き上げる感覚」を体験できるトレーニングがあります。

対象は8歳~18歳までとなりますが、ご希望の方は、下記よりご連絡ください。

◎「お腹を引き上げるを体感するトレーニング」

内容:60分/6,200円

  • お腹を引き上げるについての詳細な説明、重心の使い方の説明
  • エアリアルティシューを使った「引き上げる」感覚をつかむトレーニング体験、自宅でできるトレーニングの指導
  • お腹を引き上げるときに使う腹横筋を始めとした筋肉を鍛えるトレーニング

お申し込みは下記をクリック、課題を記入する欄に「お腹の引き上げ体験希望」と記載してください。
小中高生向け体幹トレーニング

【参考文献】

  • 石井喜八・西山哲成編著「スポーツ動作学入門」市村出版
  • 深代千之/川本竜史/石毛勇介/若山章信著「スポーツ動作の科学」東京大学出版会
  • 宮西智久編「はじめて学ぶ健康・スポーツ科学シリーズ4 スポーツバイオメカニクス」化学同人社

いま取り組んでいるスポーツのパフォーマンスを上げたいという学生さんで個人レッスンに興味のある方はこちらをご参考ください!

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