(2023年4月追記)
ストレッチに関する専門書や研究論文によると「柔軟性の向上が運動による傷害リスクを低下させるというエビデンスはほとんどない」という記載や
「ストレッチがスポーツ中のケガのリスクを下げるのかどうかは今後の研究でさらに検討する必要がある」という内容を最近では目にすることが多くなりました。
実証研究としては、「ストレッチ=けがを予防できる」と言い切るのはむずかしいようです。
しかし、そうした論文や専門書でも、上記の記載の後に「ストレッチ運動は柔軟性を向上させて動きの効率を最適化されるためにも推奨される」ということも同時に書かれています。
両者は一見、矛盾してしているようにも見えてとても混乱しますが、実証研究においてはストレッチと怪我のリスク低下の関連性を支持していないだけであって、実際に運動をする前には身体を動かしやすくするためにストレッチや準備運動のウォームアップはしておいた方が良いと考えています。
とても細く、ややこしい論点ですが「研究ではそうなのね〜」くらいに考えておいてもらえたらと思います。
(参考文献;2020 スコット K.パワーズ、エドワード T.ハウリー「パワーズ運動生理学 体力と競技力向上のための理論と応用」(メディカル・サイエンス・インターナショナル))
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スポーツをする前に準備運動をしていますか?
「やったほうがいいのは分かっているけど・・」と思いつつ、おろそかにしてしまう人もいるのではないでしょうか。
もしそういう方がいたら、ぜひこの記事を一読いただけたらと思います。
良いパフォーマンスをするためには事前の準備運動は絶対に欠かせないですよ!
なんのために準備運動をするのか?
準備運動をしたほうがいいのは分かっている、ではなんのためか?と聞かれれば
「怪我をしないため」
と、ほとんどの人がこたえると思います。
ではなぜ「怪我をしないために準備運動が有効」なのでしょうか?
この理由をもう少し掘り下げてみましょう。
まず知っておいてほしい前提として
スポーツをする前の体の状態は、スポーツをしている時より筋肉や靭帯が硬く、関節の動きが鈍い状態
であることを意識してください。
そして、スポーツをするということは体に何らかの「力」が加わります。
もしスポーツの前に準備運動をしていないとしたら、硬い筋肉に「力」が生じます。硬い筋肉は力の衝撃を吸収しづらいので、大きな力を受けたときに筋肉を痛める可能性があります。
大きな力というのは、たとえば全速力で走ったり、脚や腕を大きく振り上げたりするような動きをしたり。そういうときには肩や腰、脚の筋肉に大きな負担が生じます。
「硬いものが力の衝撃を吸収しづらい」というのが想像しづらい場合は、硬いクッションと柔らかいクッションにコップを落とした時を想像してみると「力による衝撃の吸収」がどういうものかイメージできると思います。柔らかいクッションのほうが落ちてくるコップを跳ね返さないので硬いクッションに比べたら衝撃を吸収しやすい。
つまり、怪我をしないためになぜ準備運動が有効なのか、というのは準備運動によって筋肉を柔らかくしておくことで運動時に発生する力の衝撃を吸収しやすくできると考えられます。
準備運動をすることはムダなエネルギーの消耗を防ぐ
また、運動を始めてすぐに疲れを感じた経験はありませんか?
筋肉や靭帯の動きが鈍いと大きな力は出しにくい傾向にあり、余分な力を使うのでエネルギーを消耗しやすくなります。
運動を始めてすぐに息が切れやすいときは、筋肉や靭帯が硬く関節の可動域が狭い状態のまま大きな力を出していたり、体が温まってない状態なので体にうまく酸素を取り込めていないため(*)と考えられます。
ムダなエネルギーの消耗を防ぐためにも、スポーツをする前にはしっかり準備運動をしましょう!
*準備運動と酸素供給についてはこちらの記事で書いています
どんな準備運動をしたらよいか?
では、どんな準備運動をしておくとよいのかというと、時間があれば20分くらいかけて全身をストレッチできると良いと思います。
取り組むスポーツの運動強度が高い場合(**)にはもう少し時間をかけたほうが良いです。
(たとえば、わたしがポールダンスの練習をするときはだいたい40分くらいストレッチしています)
**速いスピードで走る、ジャンプをする、筋肉を大きく伸ばす動きがある等
具体的には、首、肩、手首、股関節、足首を回す。腰はひねるストレッチ、太ももとふくらはぎは軽く叩いたりしながらもみほぐしたり伸ばす。アキレス腱もしっかり伸ばす。
スタジオに体験に来てくれたお客さんに、「運動前にどんなストレッチしてますか?」と時々聞いてみると、下半身のストレッチは意識してる方が多いです。
上半身、特に腰や肩の周りはバランスを崩した拍子に痛める可能性もあるので上半身もしっかりストレッチしてくださいね!