この記事はスポーツに取り組むひとで、スポーツノート(*)をもっと活用したい!練習の質を上げる方法を探している・・という人に向けた記事です。
当スタジオの小中学生向けのパーソナルトレーニングでも取り入れているやり方です。
「練習の質を上げる」ことを目的にしたノートなので、スキル向上に特化したノートの書き方です。(目標とか練習時の感想等を書いたりする、モチベーション向上用とは少し異なります)
ぜひご参考いただければ幸いです。
*)スポーツノート、練習ノート、部活ノートなど、様々な言い方があると思いますが、この記事では「スポーツノート」で統一します。
練習の質を上げるために必要なスポーツノートの書き方
スポーツをやっていると一度は耳にしたことがあると思いますが、練習の”質と量”という言葉。
「練習量だけでなく、質を上げるような練習が必要」とか。
★練習の質とは
練習の質という定義については、あいまいだったり人によって解釈が違っていたり、わかるようでわからない印象の言葉ですが、ここでは便宜上、次のように定義したいと思います。
「練習の質とは、スキル向上を目指して、動作の一つひとつを分解し、確認しながら練習すること」
あくまでわたしなりの解釈です。
なお、練習量と質はどちらが重要か?というトピックもよく聞きますが、ここでは割愛して別の機会に記事にします。
★具体的な書き方
では、さっそくスポーツノートの書き方をお伝えします!
見本の画像を参考に確認してみてください。(画像の例はチアダンスのトータッチとフィギュアスケートのキャメルスピン)
【スポーツノート書き方要点】
- 練習したいスキル(技・動作)を決める
- 1ページ、1スキルという配分にする(練習したいスキルが3つなら、それぞれ別のページに書いて全部で3ページになるイメージ)
- 現時点でわかっている「スキルのポイント」を書き出す。絵が得意なら絵でもok(画像の①)
- 3.で書き出したポイントに沿って、「できたこと・できなかったこと・わからないこと」を書く(画像の②)
4.の「わからないこと」は、少し迷う部分かもしれません。
3.で動作のポイントを書いたときに、全部理解できていて「わからないことはありません」という場合には当然、4.の「わからないこと」は空欄になります。
しかし、動作のポイントを書いているときに、わかっていたつもりでも「あれ?あのタイミングはどうだったっけ?」とか「この時の手の位置はこれでいいんだっけ?」と疑問が出てくることもあるとおもいます。
ぜひ、それを書いておいてほしいです。
少しむずかしいな・・と思う人は、スポーツ動作学のテキストからいくつかポイントをピックアップしてみたので、次の部分を参考に考えをめぐらせてみてください。
- 立ち姿勢:
体のどこに力が入っているか?リラックスか?、目線、手や肩、両足の位置など - 止まっている状態から動くとき:
目線、手や足の位置、体重移動、呼吸のタイミングなど - 動いている状態から止まるとき:
目線、頭の位置、肩は上がる?下がる?、ひざは伸ばす?曲げる?、重心はどこにある?どこを意識する?お腹は真っ直ぐ?おしりは引っ込める?など - ジャンプ・跳ぶとき:
踏み切る足の位置、踏み切るときの手の動かし方、目線、足首は曲げる?伸ばす?、上半身はまっすぐにするのか、曲げるのか、など - 道具を使うスポーツ:
手に持ったり握ったりするときはどの指を意識する?肩甲骨は使う?ひじの角度や目線の位置、お腹に力は入れる?腰のひねりはどれくらい?、頭や足の位置、どれくらいのスピードが必要か、など - 相手とぶつかる(コンタクト)スポーツ:
目線、あごや頭の位置、瞬間的にスピードが必要か、相手のどこを意識するのか、重心位置の切り替わり、など
★インスタグラムで「#練習ノート」と検索してみると、いろんな競技のスポーツノートの投稿があります。ぜひそちらも参考にしてみてください。
スポーツノートをしっかり活用するために必要なこと
スポーツノートは上記のように分類して書くことができれば、書くだけでも頭の整理になったり、新たに気づくことがあったりするので、それだけでも練習の質が変わる可能性はあります。
わたしがパーソナルトレーニングを指導している学生たちも、「そういえばここがあやふやでした」と自分自身で気づいて確認することができています。
しかし、より、練習の質をアップさせるためにはぜひ、次のことに取り組んでみてください。
【スポーツノート振り返り要点】
★できたこと
無意識でできているレベルならばOK、できていないことに注意を向けた練習に切り替える。
まだそこまでではないレベルなら、毎回同じようにできるまでしっかり身につける。
★できなかったことの対策
- 自分の動きを観察する
- できている人やお手本の動画を参考に、自分との違いを分析する
- 動きに必要な基礎トレーニングをする
まずは自分の練習の様子を動画に撮って、確認することをお勧めします。
そして、できている人のお手本動画と見比べながら、自分の動きとの差を確認して再度練習してみてください。
動きによっては柔軟性が足りなかったり、筋力が少し足りなかったりということがあるとおもいます。その場合はしっかり基礎トレーニングをしていきましょう。
動画撮影がむずかしい場合は、誰かに見てもらってフィードバックを受けるという形でも良いです。
できるようになるまで練習するのが基本ですが、「なぜできないのか?」を少し考えてみてください。
そうすると、「ここの部分がわかっていないからできないのかもしれない」という疑問が出てくるかもしれません。
そのときは、ぜひ疑問点を「わからないこと」に追記しましょう。
★わからないことの対策
練習の質を上げるためには、わからないことの解消が肝心です。これがいちばん重要だと思っています。
では、わからないことの解決方法はどうするのが良いのか。
- 指導者に訊く
- できている人やお手本の動きを観察する
- 調べる
- 指導者以外(同じチームのメンバーや保護者など聞けそうな人)に聞く
言わずもがなですが、指導者に訊くのが正確だと思いますし、それで解決できるのがいちばん良いです。
ですが・・指導者に質問するのはけっこうむずかしいことと感じています。
スポーツに限らず勉強なども同じかと思いますが、
「どんなふうに質問したらいいかわからない」
「質問したら返ってきた答えが微妙に違っているような気がする」
「質問したけどわからなかった」
「先生にそもそも気軽に質問できない」
など、さまざまな理由で「訊く」というのは案外むずかしいものではないかなと感じています。
では、そういう場合はどうしたら良いのか。
できなかったことの対策と同じになりますが、できている人の動きを見て、自分と比較して違いを見つける。
そして、その違いを自分で調べたり、考える。
一人でやるのがむずかしい場合には、指導者でなくても一緒に練習しているメンバーや、練習を見てくれている保護者にも聞いてみる。
最近では、Youtubeなどで発信しているアスリートも増えてきていますし、とにかく聞けそうな人に聞いて自分で考える力をつけることが、結果的に練習の質を上げることになるのではないかと考えています。
部活やクラブチームでスポーツノートを書いている場合には、他の子のノートと見比べるというのも一つの方法です。
ちなみにわたしがトレーニング指導している学生たちの場合は、指導者に聞けそうなら聞くというのを大前提に、それがむずかしい場合には、わたしや保護者の方と一緒にディスカッションするような形をとっています。
わたしの得意分野は審美性競技で必要となる動作ですが、とはいえ、チアダンスやフィギュアスケートの経験はありません。
なので、Youtubeやスポーツ中継番組のお手本動画を分析しながら「このときは体幹部をこういうふうに動かしているようなので、体幹部分への意識はあるか?」など、学生本人と練習を見ている保護者の方に確認を取りながらいくつか対策を考えます。
そしてその対策を実践してもらって、学生からフィードバックを受けて、うまくできているならばそのまま練習、何かが違うようなら再度検討する、という手順です。
あるいは、こうした手順を何度か繰り返すと、わからないことがより明確になっていくので、学生も「こういう感じで先生に質問できるかも」と思うらしく、その段階で”指導者に訊く”ことができるようになっています。
スポーツノートを書くとどんなことに役立つか?
さいごに、スポーツノートを書くメリットをまとめておきます。
この段落はどちらかというと、スポーツ指導に関わるひとや保護者向けかもしれませんが。
役立ちポイント① ものごとを分解して考える力を養う
一連の動作を分解して考えるというのは、最初はむずかしいし慣れないことですが、やり続けることでものごとを分解して考えることができるようになってくるのではないかと思います。
スポーツ指導の現場では、指導者が競技者に「考えて動け」「考えて練習しろ」という言葉を発しているのをときどき耳にしますが、まさに”言うは易し行うは難し”です。
考えるまえに必要な、どこに課題があるのかを探るというステップを訓練することによって考える力を養うことにつながるのではないかと考えています。
役立ちポイント② 質問する力を養う
さきほどの段落の「わからないことの対策」で触れたように、「先生にどんなふうに質問したらよいかわからない」と感じている競技者は一定数いるのではないでしょうか。
いきなり質問するのがむずかしい場合には、スポーツノートを継続的に書いていくことで、どこに課題があるのかより明確になって、質問もしやすくなるのではと考えられます。
役立ちポイント③いくつかのスキルに共通した課題が見えてくる
練習しているスキルをいくつかノートに書き出してみると、できなかったことやわからなかったことに共通して出てくる単語や表現が見つかる場合もあります。
例えばですが、フィギュアスケートをやっている学生さんのノートで次のような記載がありました。
赤枠の部分にあるように「身体を止める」というのがキーワードとして共通しています。
詳細にヒアリングしてみると、それぞれの動作で瞬間的に生じる「体の軸を感じ取る感覚」を「身体を止める」という表現しているということがわかりました。
このように共通した課題が分かれば、対策もしやすくなりますし、競技者の弱点について競技者自身も指導者もわかるので、さらに効率的な練習に取り組むことができます。
役立ちポイント④成功の再現性を上げる
スポーツノートのいちばんのメリットは「成功の再現性を上げられること」だとわたしは感じています。
なんとなくうまくいった、最初から上手にできてしまったスキルは、いざ試合になると「なぜかわからないができなかった・・」というふうになってしまう可能性もあります。
どうして成功したかがわからなければ、失敗したときにその原因を突き止めることが難しいとおもいます。
どこに気をつければいいのかがわからないので対策しようがないですからね。
なので、できれば一発でできたスキルであっても、なるべく「動作のポイント」を整理しつつ、そのポイントを全部クリアできたから成功したんだ、という一手間をかけておくことが必要ではないかなと思います。
そして、ノートを見返しながら練習をすることによって「なぜかわからないけど本番で失敗した」というのは少なくとも防げるのではないでしょうか。
なお、ノートに書くのが苦手な人は、音声でも良いとおもいます。
動画を撮りながら、動作のポイント、できたこと・できなかったこと・わからないことを話して記録する方法でも良いので、ぜひ「練習の質」を高めるために実践してみてください!
★ステップアップコース受講中の児童の練習ノート事例
【参考文献】
- 石井喜八・西山哲成編著(2002)、スポーツ動作学入門、市村出版
★スポーツノートに関するご相談はこちらのページに記載のBにて承っています。(ノートチェックをご希望の場合は対象スキル2つとさせていただきます)
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