柔らかいだけではキレイに跳べない⁈前後開脚ジャンプの仕組み&トレーニングを解説

この記事は、「床の上では開脚ができるのに開脚ジャンプをしようと思うとあまり脚が開かない…」という方のために空中で前後開脚するときに必要な筋肉についての解説しています。

どんなトレーニングをしたらよいのかも書いているのでぜひ、参考にしてみてください。

 

なお、ダンスやバレエなどのジャンプで高さをしっかり獲得したい場合の、「高く跳ぶためのジャンプ」について知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

 

 

 

床での開脚と空中での開脚の違い

 

床の上で開く開脚も空中になるとなぜか開きづらい・・その理由は、床に接している状態では「筋肉が重力を感じにくい」からです。床に接しているので重力に引っ張られる感覚そのものがわかりづらい。

 

実はポールダンスも同じで、空中で開脚をするときには重力や空気抵抗がある分、床での開脚よりかなり筋肉を使っています。

 

空中姿勢になったときに、重力によって下に引っ張られる力に逆らって脚を上げてキープしなければならないので、柔らかいだけでは開脚ジャンプはできません。

前方の脚を上げて支える筋力、後方へ蹴り上げて支える筋力が必要です。

 

 

前後開脚ジャンプに必要な要素

 

前後開脚に必要な要素を研究した論文では次の3つが、必要要素とされています。

片足踏み切り前後開脚ジャンプ時の開脚角度に関与している要素は、両群ともに静的柔軟性、動的可動域、下肢の挙上保持能力であった。

(丹羽涼子 小西裕之ほか、「開脚角度と柔軟性との関係についてー片足踏み切り前後開脚ジャンプの場合」仙台大学紀要2005.3 p32~39より引用)

 

ここで挙げている、①「静的柔軟性」②「動的可動域」③「下肢の挙上保持能力」とは、それぞれ分かりやすく置き換えると「①床での前後開脚」「②空中での開脚姿勢」「③開脚した脚を維持する筋力」という意味です。

 

「①床での開脚姿勢」は通常の柔軟と同じなので、そもそも床であまり開かない場合はまずは床で180度開くように柔軟性を上げるのが最優先となります。

残りの2つの力をつけるために必要なことをそれぞれ解説していきます。

 

 

②空中での開脚姿勢:重力に逆らって脚を上げる筋力、腸腰筋を鍛える

 

重力に逆らって脚を上げる時にポイントとなるのが腸腰筋です。

腸腰筋は、背骨から骨盤、大腿骨にかけてある大腰筋および小腰筋、骨盤内側から大腿骨にかけての腸骨筋の3つを合わせた総称です。

 

脚を前に出す動きを屈曲といいますが、屈曲時には腸腰筋は縮む動きになります。

脚を後ろに出す動きは伸展といって、こちらは腸腰筋が伸びる動きになります。

 

床で前後開脚ができる人は腸腰筋を縮ませる、伸ばす、の柔軟性はOKと思います。問題は、重力に逆らいながら縮める、伸ばす筋力があるかどうかです。

 

これを鍛えるには床でストレッチするだけでは足りないので、速いスピードで動かすトレーニングが必要です。

一番かんたんなのは、ストレートレッグ・マーチの応用です。

前方向および後ろ方向に、ひざを伸ばしたまま素早く脚を上げる。写真と動画では前・横・後ろとやっていますが、前・後ろだけでもOKです。

(下記の動画はパーソナルトレ受講者へ自宅トレ用で作成した動画のため、特定の人に向けた話し方になっております、すみません)

 

 

後ろのひざが曲がるときは太ももの付け根を意識する

上記のトレーニングでも、開脚ジャンプをしたときでも、ひざが伸びない場合には、太ももの前を後ろに押し出すように意識して見てください。

脚はおなかを中心に後ろに振り出すイメージです。

 

なお、素早く脚を上げる動きで身近にできそうなものに、鉄棒の逆上がりもあります。

脚を前に蹴り上げる時になるべく真上に振り上げるようにやってみてください。

 

 

③開脚した脚を維持する筋力:脚および臀部(おしり)の筋力を鍛える

 

上げた脚をキープするには、腸腰筋の他に、脚そのものの筋力やおしりの筋力も鍛える必要があります。

説明はちょっと複雑ですが、興味ある人は次の記事を参考にしてみてくだい。脚自体にはたらく力について解説しています。

 

この筋力をアップするには、ゆっくり筋力を使いながら鍛えていくのが有効です。

まずは下記1分動画で実施しているトレーニングをやってみて、

かんたんなようであれば画像のように壁から離れて5〜7秒くらいのキープトレーニングに。

さらに慣れてきたら3番目の動画の35秒過ぎから始まるトレーニングがお勧めです。

 

 

なお、前後開脚ジャンプを研究した論文はわりと多くありまして、なかでも「動きの美しいジャンプ」を研究された方はこのように述べていらっしゃいます。

 

評価の高いジャンプは、ジャンプのフォーム形成の重要な局面において、後脚を高く引き上げて大きく開脚し、上体がほぼ垂直(多少前傾する)に保たれ、左腕は水平に近い状態(*)で位置されていることがわかる。このようにフォーム全体が運動方向に対してできるだけ平行なフォームをしていればジャンプ全体の印象としての運動感を助成するであろう(中略)

(川端昭夫、「動きの美しさに関する研究 -前後開脚大ジャンプの美的基準について-」中京大学体育学論叢1986. p46より引用)

(*)この研究論文では右を前方向に出す前後開脚ジャンプを実施

 

さらっと書いていますが、後脚をしっかり上げるのがとくにむずかしいと思います。

地道なトレーニングでがんばるとともに、開脚があまり開いていなくても上体は前傾姿勢にならないようになるべく垂直を維持したまま跳べるように練習していくことをおすすめします。

 

 

【参考文献】

  • 1986 川端昭夫「動きの美しさに関する研究 -前後開脚大ジャンプの美的基準について-」中京大学体育学論叢
  • 1993.9 坂佳代子、三宅香、内田博子「前後開脚ジャンプの運動学的分析 -体操競技・ダンスの運動を中心に-」日本体育大学紀要
  • 2005 丹羽涼子 小西裕之ほか、「開脚角度と柔軟性との関係についてー片足踏み切り前後開脚ジャンプの場合」仙台大学紀要
  • 2005 丹羽涼子 小西裕之ほか、「脚開角度と柔軟性の関係について -片足踏み切り前後開脚ジャンプの場合」仙台大学紀要
  • 2019.8 鈴木健大、升佑二郎ほか「女子高生新体操選手における前後開脚ジャンプ動作の運動学的考察」日本リハビリテーション学会誌

 

こちらもぜひ参考にしてね

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