この記事ではフィギュアスケートのビールマンスピンを行うにあたって、なるべく腰を痛めないように必要なことのポイントをまとめています。
当スタジオのパーソナルトレーニング受講生の約半数はフィギュアスケートに取り組む児童・学生のため、ジャンプに次いでトレーニングに取り入れる割合が多いスキルです。
柔軟性や筋力がある程度向上してくると、陸では持てるようになっても氷上に出ると回転が止まってしまったり、軸がすぐに傾いてしまう・・というのが次の課題です。
ビールマンスピンはとても高度なスキルゆえに、各関節の過伸展(伸ばしすぎ)、過屈曲(曲げすぎ)の代償が大きく、とくに腰の柔軟性だけに頼ったやり方はケガにつながるのでお勧めできません。
なるべく安全に、かつ、スピーディーな回転を維持するためには柔軟性だけでなく、どこで支えているのかを確認しながら、それに応じた筋力トレーニングも必要です。
股関節の柔軟性がある程度獲得できたらぜひ、筋力トレーニングも一緒に取り入れてみてください。
ビールマンに関する記事は以前にも投稿していますのでぜひそちらも参考に。
(参考)ビールマンポーズ基本のステップ(どこで支えるのか)、腰の可動域、軸の安定など
陸上と氷上での違い、静止と回転姿勢の違い
陸上との違いは、①軸足の安定性 ②スケート靴の重量、静止ではなく回転しているときには、③回転速度が落ちないように素早くビールマンの体勢になる必要があること、④遠心力に耐えられないとすぐに軸ブレする(足の位置や体軸が斜めになる)などの違いがあります。
ただでさえむずかしいポーズなので氷上になればなおのこと、むずかしいのは当然ですね。
氷上で唯一、陸よりアドバンテージがある点をあげるなら、ブレードの高さの分だけ足を持ち上げやすい点でしょうか。
ただ、この点も小学生(低学年)では、まだブレードを持つ手も痛くなるようなので身体全体で支える感覚を持たないとケガのリスクは高いと思います。
1回(1日)の練習で何度もがむしゃらに練習するのはお勧めしない
ビールマンに関する他の記事(冒頭のリンク先をご確認ください)でも触れていますが、ビールマンは身体への負荷が大きい姿勢です。
そのため、1回(1日)に何度も何度もチャレンジしたり、事前にストレッチをしていない状態で取り組むのはおすすめできません。
スタジオのパーソナルトレーニングでも、ビールマンポーズの姿勢を取る前に各部位のストレッチや筋トレをしっかり行い、ポーズの練習は3~4回で終わりにしています。
1回ごとに、腰やそのほかに痛いところはないかを確認しています。
氷上での練習回数も基本的には3~4回くらいに留めておくのがよいのでは・・と思います。
陸上での練習よりも回転がかかる分、身体への負荷も大きくなっていることを忘れずに注意しながら練習していただきたいです。
回転を速くするには素早く脚を上げる
①なるべく重心の位置を落とさない
ビールマンに入る姿勢のときに、持つ足の位置をなるべく高い位置で持てるほうが軸が安定しやすくなります。
低い位置で足をつかんでしまうと、上にあげてくるまでの間に「回転軸の幅」が広がったり狭まったり、身体の中心軸も安定しないため回転速度は落ちやすくなります。
軸の安定については下記の記事でも解説していますのでぜひ参考にしてみてください。
②脚は素早く上げる
(漢字表記について:「足」は足首から下、「脚」は太ももなども含めた全体部分)
ビールマンに入るときはヘアカッターの体勢から入ることが多いと思いますが、足を持ったら素早く上げることで回転速度を落とすことなくスピードアップさせることができます。
回転軸の幅をゆっくり変えるよりも素早く変えるほうが(ex.アップライトスピンで広げた両腕を素早く縮める等)回転速度が上がるというのは、フィギュアスケートをされている方なら言わずもがなと思いますがそれと同じ原理です。
足を持ったら足先が真後ろにくるように素早く上げる練習を陸上でしてから、氷上で実践することをおすすめします。
回転の軸ブレを防止するには回転方向側の肩甲骨を意識する
ビールマンポーズに必要なストレッチや筋トレは「ビールマンポーズに必要なステップ」の記事で確認いただければと思いますが、回転の軸ブレに関しては、つぎのことを意識されるとなお良いです。
ビールマンスピンをするときに、左脚を軸に左回転で右足を持つとき(*)には右脚は遠心力を受けて右側にどうしても落ちやすくなります。
左回りで左足を持つドーナツスピンができる方はそれと比較すると分かりやすいと思いますが、回転方向に足が巻き込まれていく体勢の場合は足を保持しやすいですが(しかも回転がかかればかかるほど安定しやすい)、それと逆の、回転方向の遠心力を受けてしまう体勢は回転軸の外へ足が落ちやすくなります。
そのため、なるべく左側の肩・肩甲骨周辺の筋肉に意識を置いて、遠心力に引っ張られないように足を身体の真後ろで維持するように注意してみると、物理の原理的には軸ブレを防ぎやすくなります。
(*)わたしが関わった児童・学生は左回りで右足を持つパターンだけでしたが、もし回転方向や軸足が逆の場合には意識するポイントが変わりますのでご注意ください。
足を持つ手もどちらかとういと、左手をやや強めに意識して持つイメージです。
右利きの人はとくに右手で支える感覚が強いと思いますが、できれば左手でも支える感覚を持ってみてください。
左手の使い方はスケート靴を右手で持って右ひじや手首周辺を持つやり方よりも、両手でスケート靴を持てるほうが左手で支える感覚がつかみやすいと思います。(そのためには肩・肩甲骨周辺の柔軟性が必要です)
★スタジオで実践している肩甲骨周辺の感覚を磨くトレーニングを一部ご紹介★
・まずは肩全般をストレッチ
肩・肩甲骨ストレッチは、肩を前方向・後ろ方向に回したり、腕をうしろで組んで上体を反らしたり前に倒したりなど、2~3種類スタンダードなものを取り入れてみてください。
ダンスの基礎トレでよく取り入れられる肩や胸のアイソレーションもおすすめです。
ビールマンポーズ基本のステップの動画もぜひご参考ください。
・肩甲骨周辺を意識して支える感覚 (各トレーニングの一部はページ最後に挿入している動画で確認いただけます)
スタジオではハンモックやバランスボールを使って肩甲骨周辺で支える感覚を磨くトレーニングをしています。
このほかヨガのハトポーズや、ハトポーズを応用したストレッチなども有効です。下の写真のストレッチは、野球専門のトレーナーの方に以前教えていただいた傷害予防のためのストレッチです。
野球のピッチングも肩やひじへの負荷が大きいので、ケガ予防のためのストレッチをかなり念入りにされているようです。
↓↓オンライントレーニングでも様々なアイテムで実施、こちらの児童は今シーズンのプログラムからビールマンスピンが入ったのでほぼ毎回こうしたトレーニングをしています
・肩甲骨周辺を鍛える
肩甲骨周辺の筋肉に少し負荷をかけるトレーニングでセラバンドやピラティスボールを使っています。
・うしろから支えて、左手のみで右足を持つ練習
充分に肩や肩甲骨周辺をストレッチしたり意識を向けるトレーニングをしたら、ビールマンポーズで実践!
右足を右手で持ちあげて、両手で持つ。そして右手を離して左手だけで右足を持って左肩甲骨に意識を置く練習。
(↓↓こちらの学生は、あと少し股関節の可動域があると腰や肩もラクになるので、パーソナルトレでは股関節の柔軟も同時に実施しています)
・肩トレーニング実践前と実践後
肩・肩甲骨のトレーニングを実施した後は足を両手で最初から持つことができ、上半身も前方向に倒れずに引きあげておけるようになりました。
ということで、ビールマンスピンの練習は事前トレーニングを実践してから取り組むように気を付けてていただけたらと思います。
トレーニングの一部は下記の動画でもご確認いただけます。
★小中高生のパーソナルトレーニング体験はこちらから受け付けています